リクルート社の入社辞退率の販売は何が問題だったのか。

リクナビが運営するサービスが法令違反により行政指導をうけた。学生の個人情報が企業の採用判断に用いられていたのではないかという疑いである。本稿ではより詳細にみていきたい。

事実関係の整理
 リクルートキャリア株式会社(リクナビ)が提供するサービス「リクナビDMPフォロー」において内定辞退率予測データを算出し、企業が合否を学生に伝える前に利用していた。9月6日、厚生労働省は職業安定法に基づく行政指導を実施し、全国求人情報協会向けにも文書で要請を行った。
 「リクナビDMPフォロー」とは、採用企業が、リクナビに面接者リストを提供、リクナビ上の個人情報(他社受験数や就職活動状況など)からその企業への志望度の高さを算出したものを提出するというものである。

違法のポイント
 リクナビの資料によると、「東京労働局より、当社が提供していた『リクナビDMPフォロー』が職業安定法(昭和 22 年法律第 141 号。以下「安定法」といいます。) および同法に基づく指針(以下「安定法指針」といいます。)に違反していた」とのことである。
 一部ユーザーについては、個人情報保護法に基づく同意を得ないで、データの加工、提供を行っていたとのことでもあるが、今回の事案では、個人情報保護法違反だけでなく、安定法違反ということで行政指導が入ったようである。

倫理的・道徳的に反するポイント
 とはいえ、今回の事案において、個人情報の利用・提供に関して同意を取っていればリクナビはビジネスを継続していた可能性がある。にもかかわらず、行政指導が入ったということは、顧客(=学生&企業)に対するサービス提供でなく、企業向けサービスに偏ってしまった点が、営利目的に学生の情報を売ったと思われた点にある。

個人情報はいかに扱われるべきか
 個人情報保護法の第一条において明確化されている点は、本法の法目的は「個人の権利利益を保護すること」である。今回の事案は、個人のプライバシーコントロール権を軽んじ、個人情報取扱い事業者の利益に供してしまったという点が、法令違反はないものの、法目的から逸脱してしまったという点であり、批判の対象と考えられる。このことからもわかるように、個人情報=個人の権利を情報化したものとして、取扱い範囲・方法を慎重にするべきなのであろうと考えられる。

改めて法目的を理解するには
個人情報保護法の逐条解説–個人情報保護法・行政機関個人

情報保護法・独立行政法人等個人情報保護法 第6版

個人情報保護法の知識〈第4版〉 (日経文庫)

個人情報保護法〔第3版〕

個人情報保護法の解説 第二次改訂版